
不登校のタイプ
かつて日本では、「不登校=家庭の愛情不足やしつけの問題」といった家庭要因に原因を求める見方が主流でした。非行などの問題行動と結びつけて語られることも少なくありませんでした。
一方で、文部科学省の最新の調査(2025年10月)では、不登校の背景として学校が把握している主な相談内容は、
「学校生活に対してやる気が出ない」
「生活リズムの不調」
「不安・抑うつ」
などが多く、家庭の愛情不足だけでは説明できない、多様な要因が示されています。
このページでは、これまでの支援の経験や知見をもとに、不登校の傾向をいくつかのタイプに整理してご紹介します。
ここで扱うタイプは診断名ではなく、「どのような支え方が合いやすいか」を考えるための整理です。一人のお子さんの状況に、複数のタイプの特徴が重なることも珍しくありません。
「うちの子はどのタイプか」を一つに決めつけるのではなく、主に当てはまりそうなタイプを手がかりにしながら、ほかのタイプの説明もあわせて参考にしてみてください。
過保護・過干渉傾向型
(守ろうとしてのサポートが強くなりすぎるケース)
ここでは、いわゆる「愛情不足」と言われてきたタイプとは異なり、
十分な愛情があるからこそ、「守ろうとし過ぎてしまう」ご家庭のケースを扱います。
お子さんが困らないようにと、先回りしてサポートすることが続くと、
結果として「自分で考えて試してみる経験」が少なくなりやすくなります。
-
「宿題はしたの?」
-
「忘れ物はない?」
-
「早くご飯を食べないと間に合わないよ」
といった声かけ自体は、多くのご家庭で自然に行われているものです。
ただ、それが常に大人主導で先回りする形になると、
「学校で○○が起きたらどうしよう」
「学校が怖い」
といった“まだ起きていない出来事”への予期不安や、漠然とした恐怖が強まりやすくなります。
予期不安の内容はさまざまです。
-
「友達にたたかれたらどうしよう」
-
「忘れ物をしたらどうしよう」
-
「うまくできないかもしれない」
といった、起こるかどうか分からないことに対しても、強い不安を感じてしまうことがあります。
こうした不安に対して「自分で乗り越えた経験」が少ないと、
-
「明日どうしたらいい?」と不安な気持ちを何度も確認したくなる
-
夜遅くまで保護者に不安を話し続けてしまう
-
「保護者から先生に電話してほしい」と、大人に解決をゆだねる場面が増える
-
「できないからやらない!」と、緊張する場面そのものを避けようとする
といった行動が目立ってきます。
この傾向が続くと、次第に
-
宿題
-
給食
-
人間関係
といった個々の課題だけでなく、
「そういう嫌なことが起こるかもしれない場所=学校そのもの」
を避けるようになっていきます。
ここでは、この状態を便宜上
「枠組みが広がり過ぎてしまった状態」と呼びます。
本来は「宿題」という小さな枠で向き合うはずだった不安から逃げるために、
「学校」という大きな枠ごと避けるようになってしまったイメージです。
この段階まで進むと、たとえもともとのきっかけであった
-
宿題
-
給食
-
特定の人間関係
などを改善しても、すぐには復学につながらないことが多くなります。
「苦手な給食は残していいことになったよ」
「うん。でも今度は図工の授業が不安で……」
と、別の不安に心がとらわれてしまいやすくなるためです。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「このタイプに決めつける」必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
感情が高ぶると、なかなか気持ちを切り替えられない
-
登校できた日は、校内や放課後では比較的機嫌よく過ごせる
-
「ありがとう」「ごめんなさい」と言葉にするのが苦手
-
失敗や注意を受けることを強く恐れる
-
自分なりのこだわりが強く、思い通りにいかない場面が苦手
こうした特徴のあるお子さんは、
「本当は学校に行きたい気持ちもあるのに、失敗や不安が怖くて一歩が出ない」
という状態に陥りやすく、
RAYが重視する「行きたいのに行けない不登校」の代表的なパターンの一つと言えます。
事例:小学校4年生・男の子の場合
-
幼稚園の頃に登園しぶりはあったが、小学校入学後は大きな問題なく登校していた。
-
小学3年生で、相性の良かった担任の先生が離任してから、不安を訴える場面が少しずつ増えていった。
-
その頃から、週4日ほど保護者同伴での登校が続き、夏休み明けには別室での母子登校が中心となった。
-
「保護者と離れたくない」「先生が怖い」「勉強もしたくない」といった発言が増え、学期末には別室への五月雨登校が続くようになる。
-
4年生になる頃には、
-
別室登校の回数も減り、週に1回登校できるかどうかという状態
-
登校できていた時期には学力の大きな遅れはなかったが、登校がほとんどできなくなってからは学習の遅れが目立ち始める
-
板書への抵抗が強く、割り算のあまりの計算などがほとんどできない状況
となっていた。
保護者との面談で、
「学校は嫌いだけれど、ちゃんと通えるようになりたい」
という本人の気持ちが確認できた。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、まず
-
保護者が先回りして対応してきた場面(支度・宿題・先生との連絡など)を一緒に振り返る
-
「守ってきたからこそ、子どもが自分で試す機会が減っていた部分」がどこかを整理する
-
本人の不安を否定せず、「どこまでなら自分でやってみてもよいと思えるか」を一緒に言葉にする
ところからスタートしました。
そのうえで、
-
朝の支度や宿題など、「今まで保護者が全部やっていたこと」を、小さな単位に分けて子どもに任せていく
-
不安が強く出る場面(登校・先生とのやりとりなど)について、「保護者が代わりにやる」から「やり方を一緒に考える」関わり方に切り替える
-
「今日全部できたかどうか」ではなく、
-
「昨日より一歩進めたこと」
-
「自分で決めて動けたこと」
に注目して声をかける
-
といった関わりを、ご家庭と一緒に整えていきました。
結果として、
-
本人がフラッティング型復学(決めた日から毎日朝から放課後まで)を選択
-
1週間後と決めた当日までに家庭でできる物理的、精神的準備を行う
-
学校と連携し、苦手な場面では先生との事前相談や配慮を得ながら参加してみる
というステップを踏み、受講開始から10日で教室への本格的な復帰が実現。
その後も、保護者の関わり方を調整し続けることで、登校は安定して継続しています。
バーンアウト型(燃え尽き傾向)
長い期間、あるいは短期集中的に受験・部活動・習い事などに全力で取り組んできたお子さんに見られやすいタイプです。
小学校受験・中学受験のお子さんに目立つことが多い一方で、
スポーツ・文化系の大会、コンクール、発表会などに懸命に打ち込んできたお子さんにも見られます。
目標に向かって走り続けている間は、緊張感と使命感で何とか頑張れるのですが、
受験や大会が終わったタイミングで糸が切れたようになり、
-
家庭での生活に覇気がなくなる
-
朝起きられない日が増える
-
好きだったことにも興味が持てなくなる
といった様子が見られ、そこからパタッと登校が途絶えてしまうケースです。
頭では
「行かなきゃいけないのは分かっている」
「せっかく合格した学校なのに、行かないといけない」
と分かっていながら、「体が動かない」「教室を想像するだけで苦しくなる」という状態になっていることが少なくありません。
このタイプは、RAYが重視している
「本当は行きたい、行かなきゃと思っているのに、もう行けない気がして身動きが取れなくなる」
という不登校の典型の一つと言えます。
こうしたバーンアウトの背景には、
-
頑張り続けてきたことによる心身の疲労
-
「また同じように頑張らないと」というプレッシャー
-
「頑張れなくなった自分」を責める気持ち
などが重なっていることが多く、単なる「怠け」や「気持ちの弱さ」ではありません。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって「このタイプに決めつける」必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
目標や約束に対して責任感が強く、頑張り続けてしまう
-
成績や結果が落ちることを強く恐れ、「完璧にやりたい」気持ちが強い
-
人前で弱音を吐くのが苦手で、限界まで我慢してしまう
-
行事や受験が終わったあと、急に疲れが出て動けなくなる
-
「行かなきゃ」と思っているのに、学校や教室を考えるだけで強い不安や動悸が出る
事例:中学1年生・男の子の場合
小学校4年生の頃、保護者の勧めもあり中学受験を意識し始める。
私立中学への入学を目指して塾に通い、自分でも志望校合格を目標に努力を続けた。
小学6年生の12月以降は、塾と自宅学習を優先するために学校を休む日も増え、
「今は勉強を頑張る時期だから」と本人も納得している様子だった。
受験直前にはプレッシャーから弱音も出たが、周囲に支えられながら試験を受け、第一志望校に合格。
保護者も本人も大きな達成感を味わい、「春からの新生活を頑張ろうね」と話していた。
ところが合格後、強い疲れが出たのか、数日経っても表情が乏しく、
小学校の卒業式には参加できたものの、家での様子はどこか元気がない状態が続いた。
春休みが進むにつれ、
「新しい学校にちゃんと通える気がしない」
「またずっと頑張り続けないといけないと思うとしんどい」
といった不安を口にするようになり、入学式の前日には涙ぐみながら
「行きたくない。怖い」と訴える場面も増えていった。
保護者は「せっかく合格した学校なのだから、何とか参加してほしい」と声をかけたものの、
入学式当日は布団から起き上がれず、そのまま長期的な不登校に移行してしまった。
RAYでの関わりのイメージ
RAYのオンライン支援コースを利用し、
-
生活リズムを整えるために、起床時間と簡単な日課だけに的を絞る
-
「また完璧に頑張らなきゃ」ではなく、「どんなペースで学校と付き合いたいのか」という本人の価値観を一緒に言葉にしていく
-
保護者の声かけも、「叱咤激励」から「ペースを一緒に考える」方向に変えていく
といったステップを踏んだ。
数週間かけて、まずは家の中での活動量が少しずつ増え、
「午前中の1時間だけ別室に行ってみる」といった小さなチャレンジから再開。
その後、別室登校→午前中のみ教室参加→通常授業への参加と段階を踏み、2ヵ月目には欠席無く朝から放課後までの登校が可能になった。
自己主張過剰型
(自己主張が強く、嫌なことを避けやすいケース)
ここでは、身体の病気や大きなけがが確認されておらず、
いじめや露骨なトラブルといった明確な出来事も見当たらない一方で、
-
「通学路が遠くて面倒」
-
「宿題が多くてやる気が出ない」
-
「人間関係が煩わしい」
-
「朝起きるのがとにかくつらい」
といった理由から、子ども自身がはっきりと「行かない」と主張するケースを扱います。
医療機関の問診などで「起立性調節障害の疑い」「発達特性の可能性」と言われることはあっても、
現時点で明確な診断がついていない、あるいは日常生活全般の困難が強くは見られない、というお子さんも含まれます。
※きちんとした診断が出ている場合は、医療の方針を優先しつつ、家庭としてできることを一緒に考えていくことが前提です。
このタイプでは、
-
嫌だと感じることを「嫌だ」とはっきり言葉にできる
-
面倒なこと・負担が大きいことに対して距離を取りやすい
一方で、
-
「嫌だけれど、必要だからあえてやってみる」
-
「楽ではないけれど、自分で決めて踏み出してみる」
といった経験が少なく、「したいこと」と「したくないこと」のギャップが大きくなりがちです。
その結果として、
「別に学校に行かなくてもいい」
「行きたくないから行かないだけ」
と自己主張を強める一方で、
心のどこかでは
「このままでいいのか不安」
「怒られるのが怖いから、余計に動けなくなる」
という葛藤を抱えていることも少なくありません。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「うちの子はこのタイプだ」と決めつける必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
朝起きるのが苦手で、声をかけられてもなかなか布団から出られない
-
「やらなきゃいけない」と分かっていても、嫌なことはつい後回しにしてしまう
-
自分の希望や不満をはっきり口にするが、折り合いをつけるのは苦手
-
家の中ではゲームや動画など、自分の好きなことには集中できる
-
学校や勉強の意味づけが弱く、「行く理由」が見いだしにくい
事例:小学校6年生・男の子の場合
-
元々、朝が苦手で、毎朝保護者が複数回声をかけないと起きないことが多かった。
-
小学校高学年になるにつれ、「宿題が多くて面倒くさい」「学校はつまらない」といった言葉が増えていった。
小学6年生のゴールデンウィーク前日、
「俺、もう学校行かないから」と一言だけ告げ、そのまま登校をやめてしまう。
保護者としては、
「数日休めば落ち着いて、また自分から行き始めるだろう」
と考え、しばらくは様子を見ていたが、本人から動き出す気配はなく、休みが長期化。
そのうちに、
-
昼夜逆転で夜中まで起きている
-
ご飯の時間がバラバラになり、家族と一緒に食卓を囲むことが減る
-
家庭内のルール(ゲームの時間、就寝時間など)が守られにくくなる
といった状態が続くようになり、
保護者が注意すると強い反発が返ってくるため、家庭内の会話そのものが減っていった。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、RAYのオンライン支援コースを利用し、まずは
-
「起きる時間」「食事の時間」など、最低限の生活リズムを家族で再設定する
-
「学校に行く/行かない」の二択だけでなく、「午前中だけ別室に行く」「この曜日だけ行く」など、中間の選択肢を一緒に考える
-
保護者の声かけを、「行きなさい」から「今日はどこまでなら動けそうか?」といった問いかけに切り替える
といった関わり方を整えていった。
数週間かけて昼夜逆転が少しずつ改善し、
本人から「卒業式には参加したい」という言葉が出てきたことをきっかけに、
学期末の数日間だけ別室登校から再開。
その後も、本人と相談しながら
-
「この日は教室に顔を出してみる」
-
「しんどい日は別室や保健室を使う」
といったペース配分を続け、小学校卒業までの間に「自分で決めて動けた経験」を積んでいき、中学生活がスタートして以降は完全登校を果たし、部活動にも打ち込むようになった。
人間関係トラブル型
(対人関係のつまずきがきっかけになるケース)
ここでは、いじめや虐待とまでは学校や第三者からは認定されていないものの、
本人にとっては「人との関わりで強く傷ついた経験」がきっかけになっているケースを扱います。
-
背が低い・高い
-
肌荒れ・体型・声の高さなどの外見上の特徴
-
「真面目すぎる」「おとなしい」「空気を読みすぎる」といった性格面
などにコンプレックスを抱えており、
-
直接言われた一言
-
SNSやグループラインでのやりとり
-
約束がうまくいかなかった経験
をきっかけに、強い恥ずかしさや怒り、悲しさを抱えてしまうことがあります。
その出来事自体は、周囲から見ると「よくあるすれ違い」に見えることも少なくありません。
しかし本人にとっては、
「自分だけ仲間外れにされた」
「自分だけ本音を出せない」
「ここにいてはいけない気がする」
と感じる決定打になり、そこから学校への足が止まり始めることがあります。
※教員による暴言・暴力、継続的ないじめ、家庭内の虐待など、第三者から見ても明らかな人権侵害が疑われる場合は、このタイプではなく「医療・行政・学校による介入を優先すべきケース」として別に扱う必要があります。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「うちの子はこのタイプだ」と決めつける必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
もともと人の目や評価を気にしやすく、緊張しやすい
-
友だちのちょっとした一言や表情を深読みして落ち込みやすい
-
仲の良い友だちが少人数で、その関係に強く依存しがち
-
「嫌われたかもしれない」「裏で何か言われているかも」と考えて不安になる
-
家では友だちへの不満や愚痴が増える一方で、直接相手には気持ちを伝えられない
こうした特徴のあるお子さんは、
「本当は学校で友だちと普通に過ごしたいのに、また傷つくのが怖い」
という葛藤を抱えやすく、RAYが重視している「行きたいのに行けない不登校」の一つのパターンと言えます。
事例:中学2年生・女の子の場合
-
幼少期から、音やにおい、他人の表情の変化などに敏感なところがあり、保護者からは「少し神経質なところがある子」と感じられていた。
-
小学校時代は、気の合う友だち数人に恵まれ、目立ったトラブルもなく過ごしていた。
中学受験を経て、本人が希望していた私立中学校に合格。
新しい環境への不安も抱えながら入学式に参加し、4月は
-
新しい友だちをつくること
-
部活動や教科担任制など、中学校ならではの変化
に戸惑いながらも、「がんばって慣れていこう」と努力していた。
ゴールデンウィークが明ける頃には、
少しずつ気の合う友だちも増え、誘われた部活に参加するようになり、
「今日は楽しかった」と話す日も出てきた。
ところが、夏休み中に友人グループで出かける計画が立った際、
家庭の予定と調整がうまくいかず、結果的に本人だけ参加できない形になってしまった。
本人は、
「自分だけ誘われなかったのではないか」
「みんなの仲が深まって、自分だけ置いていかれるのではないか」
と強い不安を抱き、この出来事を夏休み以降も引きずるようになる。
休み明けから、
-
家庭内で友だちに対する愚痴やきつい言葉が増える
-
「いじられるのが嫌」「自分だけ素を出せていない」といった訴えが増える
-
通学の支度をしながら突然涙ぐみ、「教室に入るのが怖い」と言う日が出てくる
ようになり、ある朝、泣きながら「もう学校に行きたくない」と訴え、そのまま長期的な不登校へと移行した。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、RAYのオンライン支援コースを利用し、まずは保護者側で
-
本人にとっての「決定打」が何だったのかを、否定せずに丁寧に聞き取る
-
「それくらいで」「気にしすぎ」という評価を避け、子どもの感じ方そのものを尊重する
-
友だちやクラスの「事実」と、本人の「受け取り方・想像」を一緒に整理していく
といった関わり方に切り替えていった。
同時に、お子さんが
-
「どの距離感なら友だちと付き合いやすいか」
-
「どんな関わり方なら自分を守りながら一緒にいられるか」
という、自分なりの人間関係のルールを少しずつ言葉にできるよう支援した。
その結果、しばらくは自宅でのオンライン面談や、保護者と一緒の別室登校から再開し、
友だちとの距離の取り方を調整しながら、1週間かけて教室への参加を増やしていき、2週目には完全復帰、以降は学期に1度の欠席はあるものの登校を続けている。
体調・生活リズム優位型
(朝になると体が動かなくなってしまうケース)
ここでは、
-
朝になると「頭が痛い」「お腹が痛い」「気持ち悪い」などの体調不良を訴える
-
病院では大きな異常は見つからない、あるいは「ストレスや自律神経の影響かもしれない」と言われている
-
休日や楽しみな予定の日には、比較的元気に過ごせることもある
といった、「体のしんどさ」と「生活リズムの乱れ」が前面に出ているケースを扱います。
文部科学省の調査でも、不登校の背景として学校が把握している主な相談内容の一つに
「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」が挙げられており、
朝の起床や体調不良をめぐる相談は、決して珍しいものではありません。
このタイプのお子さんは、単に「怠けている」「サボっている」のではなく、
-
夜遅くまで眠れない、寝つきが悪い
-
朝になると強いだるさや頭痛・腹痛を感じる
-
「行かなきゃいけない」と頭では分かっていても、体がついてこない
といった状態が続いていることがよくあります。
起立性調節障害など、身体面の要因が背景にある場合もあれば、
不安やストレス、生活リズムの乱れが積み重なって「朝動けない状態」をつくっていることもあります。
RAYでは、医療的な評価が必要なケースでは必ず医療機関での診察を優先することを前提に、
家庭内で整えられる部分(生活リズム・声かけ・「行き方」の選択肢づくり)を一緒に見直していきます。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「このタイプに決めつける」必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
朝、登校時刻が近づくと頭痛・腹痛・吐き気などを訴えることが多い
-
病院では「大きな異常はない」と言われるが、症状自体は本人にとってつらい
-
夜更かしやスマートフォン・ゲームの使用が習慣化し、就寝時刻が遅くなりがち
-
休日や好きな予定の日は比較的元気で動ける一方、「学校のある平日の朝」が特につらい
-
「行かなきゃいけないのは分かっているけれど、体がいうことをきかない」と訴える
-
保護者が強く促すと、涙ぐんだり怒ったりして、さらに動けなくなる
こうした特徴のあるお子さんは、
「気持ちの問題と言われるのがつらい」
「サボっていると思われたくないけれど、どうしようもない」
という板挟みの中で、RAYが重視する「行きたい気持ちはあるが、体と気力がついてこない」不登校に陥りやすくなります。
事例:小学6年生・女の子の場合
-
小学校低学年の頃から、行事や運動会のあとに「疲れた」「頭が痛い」と訴えることがあったが、翌日には元気に登校していた。
-
高学年になるにつれ、宿題の量や委員会活動が増え、帰宅時間も遅くなっていった。
-
4〜5年生頃から、就寝前に動画視聴やSNSのチェックをする時間が増え、眠るのが遅くなっていった。
6年生の2学期頃から、
-
朝の起床時に「気持ち悪い」「頭がガンガンする」と訴える
-
登校を促すと涙ぐみ、「教室のことを考えるとお腹が痛くなる」と言う
日が少しずつ増えていった。
保護者は心配になり小児科を受診。
血液検査や簡単な検査では大きな異常はなく、「成長期とストレスの影響もあるかもしれない」と説明を受けた。
一時的に少し落ち着いたものの、学期末や行事前など、
-
宿題がたまっているとき
-
テストが続く時期
に症状が強くなり、遅刻・早退・欠席が増えていった。
やがて、
-
夜眠る時間がさらに遅くなり、朝は保護者が何度起こしても反応が乏しい
-
「起きなきゃいけないのは分かっているのに、体が動かない」と布団の中で泣く
-
休日は昼前には自然と起きてきて、家族で出かけることもできる
という状態になり、保護者は「本当に体調なのか、怠けなのか」の判断がつかず、強く叱ってしまう日も増えていった。
最終的に、登校できない日が続き、RAYに相談が入った。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、まず
-
医療機関での診察内容と、保護者・本人の受け止め方を整理する
-
「仮病」か「本当の病気」かという二択ではなく、「心と体と生活リズムが影響し合っている状態」として理解し直す
-
家庭内で「怠け」や「気の持ちよう」と決めつける声かけを控える
ところからスタートしました。
そのうえで、
-
就寝・起床時刻を、いきなり理想に戻すのではなく、「まずは毎日○時までに布団に入る」といった小さなルールから始める
-
寝る前1時間はスマートフォンやゲームを控えるための家庭ルールを、一方的な禁止ではなく、子どもと一緒に相談して決める
-
「今日学校に行けたかどうか」だけでなく、
-
「起きる時間が昨日より少し早くなった」
-
「朝ごはんだけは一緒に食べられた」
といった小さな前進にも目を向けて声をかける
-
という関わりに切り替えていきました。
登校については、
-
「フルで行く/行かない」の二択をやめ、
-
保健室のみ行く
-
午前中の途中まで別室で過ごす
など、中間の選択肢を学校と一緒に検討する
-
-
朝の時点で体調が不安定な日は、「今日はここまでできたら合格」という基準を親子で共有する
といった形で、体調と相談しながら動ける範囲を少しずつ広げることを目標にしました。
2週間〜1か月をかけて、
-
夜の就寝時刻が少しずつ前倒しになり
-
「週に1〜2日は午前中だけ登校する」ペースが定着し
-
本人も「全部は無理でも、ここまではできる」と言える場面が増えていきました。
その後1ヵ月半の段階で本人と今後のステップアップについてを綿密に相談し、目標を家庭で共有した結果、
-
就寝、起床のリズムを自ら設定し、起こされなくても起きるようになり
-
朝から放課後まで教室に登校する環境に慣れ
-
「今は全部行くのが当たり前だと思える」と話して継続登校が安定しました(2ヵ月半時点)
学業つまずき・評価不安型
(勉強の遅れや成績プレッシャーが主軸になるケース)
ここでは、いじめやはっきりした人間関係トラブルが見られない一方で、
「勉強についていけない」「成績が下がるのが怖い」といった、
-
学習上のつまずき
-
テストや通知表への不安
をきっかけに不登校になっていくタイプを扱います。
低学年のうちは何とか課題をこなせていても、
-
漢字や計算の量が増える
-
読解問題が難しくなる
-
教科数が増えてテストも増える
といったタイミングで少しずつ遅れが目立ち始めることがあります。
そのままのペースで学校生活が進んでいくと、
「自分だけ分かっていない」
「先生に指されたらどうしよう」
「またテストで悪い点を取るかもしれない」
といった不安が強くなり、
-
授業中に当てられるのが怖い
-
テストや通知表の時期になると腹痛・頭痛が増える
-
宿題がたまっていくのを見ているだけで苦しくなる
といった状態になり、そこから「学校に行けない日」が増えていくケースです。
文部科学省の調査でも、「学業の不振」や「宿題の未提出」に関する相談は、不登校と関連する要因の一つとして報告されています。
RAYとしても、「勉強についていけない不安」が背景にある不登校は、決して珍しくないと捉えています。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「このタイプに決めつける」必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
ある学年・ある単元を境に、テストの点が急に下がり始めた
-
宿題や課題がたまりやすく、「どこから手をつけていいか分からない」と言う
-
漢字・計算・読解など、特定の分野に苦手意識が強い
-
テスト前や通知表配布の前後に、頭痛・腹痛などの体調不良を訴えやすい
-
保護者や先生から「もっとやればできるのに」と言われることが多く、自分でもプレッシャーを感じている
-
「どうせ頑張っても無理」「行っても怒られるだけ」といった言葉が増えている
こうした特徴のあるお子さんは、
「できない自分を見られたくない」
「これ以上、分からないまま教室に座っていたくない」
という気持ちを抱えやすく、RAYが重視している「行きたい気持ちはあるが、もう行けない気がする」不登校の一つのパターンといえます。
事例:小学5年生・男の子の場合
-
低学年の頃は、宿題も時間はかかりながら何とかこなしており、テストの点数も平均的だった。
-
3年生頃から漢字テストや計算テストのミスが増え始め、「書き取り」「繰り上がり・繰り下がり」のあたりで苦手さが目立つようになった。
-
4年生になると教科書の文章が長くなり、読解問題で点が取りにくくなってきたが、「本人が嫌がるので、復習はあまりできていなかった」と保護者は振り返っている。
5年生に進級したころから、
-
「授業が全然分からない日が増えた」
-
「テストが返ってくるのが怖い」
といった言葉が出始め、テスト前になると頭痛や腹痛を訴えることが増えた。
ある単元テストでこれまでよりも低い点数を取ったことをきっかけに、
教室で友だちに点数を聞かれるのが嫌で、翌日から学校を休むようになる。
保護者は、
「少し休めば気持ちを切り替えて行けるようになるのでは」
と考えて数日間様子を見たが、本人からは
-
「どうせ行っても分からない」
-
「またテストがあるかもしれない」
といった言葉が出るばかりで、休みが長期化していった。
休みが続く中で、宿題やプリントはさらにたまり、
本人も「余計に行きづらい」と感じるようになり、完全な不登校の状態に移行した。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、RAYのオンライン支援コースを利用し、家庭での関わり方と学習のハードルを見直すところから始めました。
具体的には、
-
まずは「全部を取り戻す」のではなく、「今いちばん困っている教科・単元」を一緒に特定する
-
宿題や課題を
-
「今日やる分」
-
「後日、先生と相談する分」
に整理し直し、「山盛りのまま置いておかない」状態をつくる
-
-
保護者の声かけを
-
「ちゃんとやりなさい」「サボっているだけでしょ」から
-
「どこまでなら一緒にできそう?」「今日はここまでできれば十分だね」に切り替える
-
といったステップを踏んでいきました。
そのうえで、
-
家の中で短時間の学習を再開する
-
「この単元だけは先生に分からないと伝える」など、学校とのやりとりの仕方を一緒に考える
-
「テストで何点取るか」だけでなく、「分かる問題が少しずつ増えていくこと」にも目を向ける
という形で、「学業のつまずき」と「自己評価」を少しずつ整理していきました。
3週間かけて、
-
家の中で15分だけの学習が定着
-
本人から「午前中の1時間だけ別室で勉強してみたい」という希望が出る
-
友達と休み時間交流する機会が増え
-
放課後も遊ぶ
ようになり、別室登校から再開。
その後、先生と相談しながら課題量の調整やテストの受け方を工夫してもらい、少しずつ在籍教室で過ごす時間を増やしていきました。
更に2週間後には午前中だけの登校を毎日行えるようになり、2か月目に完全登校を果たすことが出来ました。
環境ミスマッチ型
(学校の仕組み・雰囲気と子どもの気質が合わないケース)
ここでは、家庭内の問題や明確ないじめが原因というよりも、
学校そのものの仕組みや雰囲気と、お子さんの特性・気質の相性が良くないために、
少しずつ学校が「しんどい場所」になっていくケースを扱います。
例えば、
-
校則や指導がとても厳しく、「失敗が許されない空気」が強い
-
生徒数が多く、常にざわつきや人の多さの中で過ごさなければならない
-
オープンスペース型の教室や、常に誰かに見られている環境が落ち着かない
-
行事や委員会活動などで、「全員同じように参加すること」が強く求められる
といった学校の特徴と、
-
音や光、人混みに敏感で、静かな環境を好む
-
一斉指示や急な予定変更が苦手
-
周囲の視線や評価を強く気にしやすい
といったお子さん自身の気質・特性がかみ合わないと、
大きなトラブルがなくても、日々の通学そのものが負担になっていくことがあります。
中には、医療機関などで発達特性(自閉スペクトラム、ADHD 等)を指摘されているお子さんや、感覚の過敏さが強いお子さんも含まれます。
その場合は、医療や療育の方針を尊重しつつ、「どのような環境なら力を発揮しやすいか」を一緒に考えていくことが前提になります。
RAYとしては、「今の学校にどう適応させるか」だけでなく、
「この子に合った学び方・環境とは何か」という視点を大切にしています。
このタイプのお子さんに見られやすい特徴
あてはまる項目がいくつかあるからといって、「このタイプに決めつける」必要はありませんが、参考として次のような傾向がよく見られます。
-
校内のざわざわした音や、人の多さに強い疲れを感じる
-
体育館での全校集会や行事のあと、ぐったりしてしまう
-
先生の叱責の声や、クラスメイトの大声に過敏に反応してしまう
-
一斉に動く行事(合唱・運動会・発表)などで、「みんなと同じように動く」ことに強いストレスを感じる
-
忘れ物やちょっとしたミスに対しても指導が厳しく、「もう行きたくない」と感じる出来事が何度かあった
-
「学校の空気が合わない」「ここにいると自分がおかしくなる気がする」といった言葉が出る
こうした特徴のあるお子さんは、
「大きなトラブルはないが、とにかく学校にいること自体がしんどい」
という感覚を抱えやすく、
RAYが重視している「行きたい気持ちもあるけれど、今の形では続けられない」という不登校の一つのパターンと言えます。
事例:中学1年生・女の子の場合
-
小規模な小学校で、落ち着いたクラスメイトと過ごしており、大きなトラブルなく卒業した。
-
音やにおい、人混みにやや敏感なところがあり、運動会や全校集会のあとに疲れ切って帰ってくることが多かったが、本人なりに頑張って参加していた。
中学進学にあたり、希望していたやや規模の大きい中学校に入学。
入学直後から、
-
生徒数の多さや、教室・廊下のざわつき
-
大きな声での号令や注意
-
部活動の勧誘のにぎやかさ
に圧倒される様子が見られた。
4月の間は、「早く慣れないと」と自分を奮い立たせて通っていたが、
帰宅後はぐったりとしてソファから動けず、夕方に眠り込んでしまう日が増えていった。
ゴールデンウィーク明けには、
-
朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える
-
「クラスは嫌いじゃないけれど、ずっとあの教室にいると疲れ切ってしまう」
-
「先生の怒る声を聞くだけで、自分が怒られていなくてもつらい」
といった言葉が増え、
ある日「この学校にいると、ずっと緊張していなきゃいけない感じがして苦しい」と泣きながら訴えて、登校が止まった。
保護者は当初、「友だちとはうまくいっているのだから、慣れれば大丈夫」と考えていたが、
休みが続く中で、本人の疲労と不安が軽くならないことに不安を覚え、RAYに相談した。
RAYでの関わりのイメージ
このケースでは、まず
-
本人にとって何が特につらいのか(音・人の多さ・指導の厳しさ等)を具体的に言葉にしてもらう
-
保護者と一緒に、「学校そのものが嫌なのか/今の環境・やり方が合わないのか」を整理する
といったところからスタートしました。
そのうえで、
-
学校側に、音や刺激が少ない場所の利用、別室や図書室での学習などの選択肢がないかを相談するサポート
-
最初から「毎日フルで通う」か「ゼロ」か、ではなく、「週○日・午前中だけ」「得意な教科だけ参加」などの中間案を一緒に検討する
-
家庭では、
-
学校以外で「安心して居られる・力を発揮しやすい場」を確保する
-
親の声かけを「みんな我慢している」から「あなたに合うペースと環境を一緒に探そう」に変えていく
-
という関わりに取り組みました。
2か月の時間をかけて、
-
まずは週1回、午前中だけ別室での登校から再開
-
状況を見ながら、静かな教室での少人数授業や、通級指導教室の利用などの選択肢を学校と調整
-
本人・家庭・学校の三者で、「どの程度の負荷なら続けられるか」を定期的に確認する
といったプロセスを積み重ね、
最終的には本人から「中途半端はここまでにしたい」という発言も見られたため、10週目から自分の在籍クラスに完全復帰しました。
本人が苦手とするものは決して平気なものに変化したわけではありませんが、「苦手を乗り越えてでも学校に行きたい理由」を家庭内での声掛けで明確にできたため、自らの意思で毎日の登校を選ぶことができるようになりました。

