本記事を書いているのは『こまち先生』こと不登校解決支援センターRay代表理事の辻です。
・(一社)家庭教育支援センターペアレンツキャンプにて、東京支部室長を拝命。
・家庭教育アドバイザー、復学支援カウンセラーとして親子関係の改善や復学支援に従事。
・SNSでは『こまち先生』として活動し、総view数は50万を突破!
不登校の支援といえば「待ちましょう」が一般的なアドバイスとなっている時代です。
その時代に「待つだけでは悪化するケースが増えている」と警鐘を鳴らし、多様なアプローチによって元の学校への『復学支援』を行っているのが不登校解決支援センターRAYです。
今回はそんなRAYの支援によって復学を果たしたケースのご紹介をいたします。
▼この記事を読んでわかること
最初のご相談
最初に親御さんからご相談いただいたのは9月の半ばでした。
「今年のGWに友達とトラブルがあり、それ以降ずっと登校が不安定な状態が続いていました。親がなだめすかしてなんとか終業式まで頑張ることができましたが、夏休み中は友達と遊ぶことも少なくあまり家を出なかったので心配していました。親から外出に誘ってもイライラした様子で応じず、宿題をやるように声をかけても強い反発が返ってきてしまいどうすることもできませんでした。こんな状態で新学期は大丈夫なのだろうかと両親ともに不安に思っていたところ、その心配が的中してしまい、夏休み明けからは一度も登校できていません」
お問い合わせフォームからのご連絡で状況を把握し、まずはその場で可能な限りのアドバイスを送らせていただきました。
文章だけでは詳細なアセスメント(分析)ができないのですが、返信をご確認いただいた親御さんから「ご連絡が返ってくる少し前にメールでアドバイスいただいた内容と同じ状況が起こりました」とすぐにお返事をいただけたため、無料電話相談へと進んでいただきました。
どの分野のカウンセラーにおいても共通しますが、カウンセリングの力量を測るうえで一つの指標となるのが『ごく近い将来の予測』です。
医師やカウンセラーは自身の経験やクライエントの状態、知見などからアセスメントを行いいくつかの所見を出します。
所見の精度は文章<電話<対面の順で上がりますが、文章の段階でもいくつかの所見を提供することはできるため、クライエントの不利益にならない所見を選んで共有してくれる医師などはきちんとクライエントの不安に向き合ってくれている印象です。
支援開始初期の様子
お電話でのご相談後、さっそく『家庭内自立支援コース』にて支援が始まりました。
こちらは専門家の直接介入を行わずに家庭の力で不登校を乗り越えていくためのコースです。
支援ではまずお子さんの性格や親御さんとの関係性、学校に対してどう考えているのかなどをお電話やファミログなどを使って細かくアセスメントしていきます。
今回のケースでは生活の端々に下記のような完璧主義傾向がみられ、独自のこだわりを見せる様子が散見されました。
・漢字の宿題をする際、正しく書けていても納得いかなければ何度も消して書き直していた。
・作文の書き出しがなかなか決まらず、取り組み始めるまでに時間を要していた。
・予定していたスケジュール通りに進まないと癇癪を起こすことが多い。
・「お母さん〇〇していい?」と言った声掛けが多く、許可や指示を仰いで失敗を恐れている様子が多い。
不登校のきっかけとなった友達とのトラブルについては「なんで僕は真面目に過ごしているのに、ちゃんとやっていないやつのせいで一緒に怒られなきゃいけないんだ!」とお母さんに語っており、社会生活を送るうえで起こりうる理不尽な出来事への耐性が少ないのかもしれないと推察しました。
さらに家庭内での過ごし方を確認していくと、夏休み中は少し落ち着いていた問題行動が散見されるようになり、恒常的にイライラした様子や不安症状、外出に対する極端な緊張が見られるようになっていました。
これらは夏休みが終わったタイミングで顕著に表れたことから、元来の真面目な性格が影響し『学校に行けていない自分に罪悪感がある』状態ではないかと推察しました。
罪悪感のあるお子さんの多くは家庭内でスマホやYouTube、ゲーム、テレビや漫画などの娯楽品に没頭していきます。
客観的に見ると病気でも怪我でもなく学校を休み遊んでいるだけに見えてしまうため『さぼっているだけなのでは?』と思われることが多いです。
しかし、不登校中にこれらの様子が見られるのは自分の心を守るための防衛機制であることが多く、向き合うことのできない現実に対する逃避であるケースがほとんどです。
ただ遊んでいるだけのように見えたり、何も考えていないように見えたとしても表面に見せる言葉や様子以上に沢山のことを考えていると捉えておく必要があります。
アセスメントの大切さ
お電話でのカウンセリング後は面談のカウンセリングに進んでいただきました。
性格分析において本人の過去や周りの環境(親御さんの性格や学校情報)情報は必須です。
たまに不登校以降の状況のみ確認しているカウンセラーもいますが、それでは不十分です。
文章のお問い合わせに始まり、お電話でのご相談、そして面談カウンセリングでいかにお子さん、親御さんの性格を掴み、適切な方針を示せるかが不登校の早期解決に大切なポイントでしょう。
我々はこれを約1週間で行います。
経験した方はご存知かと思いますが、医療・公的機関のカウンセリングではこの分析に数ヶ月かけますし、最初の受診予約を取るだけでも1ヶ月待ちということがざらです。
これは各所が怠慢なのではなく、その位の頻度でないと対応しきれない程にご相談が増えているというのが現実です。
しかし、具体的な対応方針が無いまま時間が過ぎていくのは親御さんにとって大変な苦痛ですし、お子さんにとっても休む期間がいたずらに長くなってしまうという大きなデメリットがあります。
そのため少し矛盾した考えになりますが、RAYの不登校対応は『焦らず、しかし急ぐ』方針です。
支援の始まった親御さんにはまずこの考え方をご理解いただき、アセスメントによって得られた情報を元にした具体的なアドバイスを行うようにしています。
支援開始後に家庭で見られた行動
今回のケースでは不登校の問題の他に家庭内での極度なわがままが散見されたため、まずは親子関係のあり方から改善していくことにしました。
・「お母さんお茶とってこい」
・「テレビ見るからリビングに居ないで」
・「このご飯嫌だから別のものつくってくれないと食べない」
・「お風呂に入りたくない」
・「(親の)パソコン、スマホは僕のにするから返さない」
不登校になって以降、家の中で散見されるようになった発言です。
この状態は不登校になる前も多少見られていたようですが、学校に行かなくなってから加速度的に増えたようです。
まるで親御さんを奴隷のように扱う姿は客観的に見るとかなりまずい状態でしょう。
しかし、これは決してお子さんの性格になんらかの異常があるわけでも親御さんのこれまでの教育方針が間違っていたわけでもありません。
不登校家庭の約8割でこういった問題が起きています。
元々親御さん思いの優しい子でも、自己管理ができていた子でも、家族と楽しく会話ができていた子でも、不登校をきっかけに人が変わったような振る舞いをしてしまいます。
わがままな行動だけでなく、幼児退行や不安障害、不眠、蕁麻疹などの体調への影響も頻繁に確認されます。
不登校において一番の問題は、学校に行っていないことではなく『学校にいかなくなって起こった問題行動』だと考えています。
ですので、まずは歪になってしまった家族関係を再構築することから始め、極端なわがままや要望には応えないようにしていただき、それによって生まれた不安にはきちんと向き合えるようアクティブリスニングなどのカウンセリングテクニックをお伝えしていきました。
家庭対応復学のポイント
先の対応で家庭内におけるお子さんの様子が安定し、親御さんの立場が回復してくるとお子さんからの発信が増えてきます。
・「家にいても暇だなー」
・「来週お楽しみ会あるのか・・・」
・「今度お昼だけ学校に行ってみようかな」
・「〇〇君元気にしてるかな」
こういった発言が増えると専門家でなくとも『そろそろ学校の話をしても大丈夫かもしれない』と察することができます。
登校についてアプローチすることを一般的に『登校刺激』と言います。
登校刺激をするときはまずは親御さんの時間がしっかり取れるようなスケジュールを組みましょう。
お仕事をされている場合は週末の夕方以降など、最低でも1時間は話せる想定が必要です。
話すときは
・テレビやゲームをしていない
・兄弟は同席しない
・お子さんにその後予定が無い
などの環境も確認しておきましょう。
アプローチのスタートはお子さんによりますが、スタンダードなのは端的に「学校のことで大切な話がある」と伝えることです。
この時点でお子さんが席を離れてしまう、聞く耳を持たないようなら事前の土台作りが不十分である可能性が高いでしょう。
話ができる様子であれば、まずはお子さんが今学校に対して何を思っているのか確認していきます。
「学校をお休みして今〇〇くらい経ったところだね。最初の頃に比べて少し元気が出てきたようだから安心したよ。最近学校のことは何か考えていたりするかな?」
といった形で穏やかに話すようにしてみてください。
決して頭ごなしに登校を促すのではなく、あくまで素直な気持ちを確認することが大切です。
この後出てくるお子さんの反応は不登校になった原因やその後の過ごし方、現在の先生やお友達との関係性によって多岐に渡ります。
今回のケースではGW頃にあったお友達とのトラブルをまだ引きずっているという話が出たため、学校の先生にも協力してもらい当該児童と和解する場を設けてもらいました。
もちろん以前にもこういった場を設ける機会はあったのですが、当時は「もう絶対に会いたくない!」という本人の強い拒否があったため叶いませんでした。
・家庭内で精神的な落ち着きを取り戻させること
・学校への登校意思を取り戻すこと
・親御さんと建設的な話ができる関係性を作り上げること
これらを行うことでようやく問題に向き合う気持ちが固まり、結果的に動き出すことができたケースといえます。
不登校のきっかけとなったトラブルに具体的な解決が見えた結果、お子さんの復学意思は飛躍的に高まりました。
休んでいる間にわからなくなった勉強は親御さんからサポートしてもらい、外出にも積極的に応じるようになったため生活の質は目に見えて向上していきました。
結果として今回のケースでは親御さんからのアプローチ後、1週間で自らの教室に復帰することができています。
お友達からは歓迎の声が上がり、担任の先生からは「まるでお休みしていなかったみたいにクラスに馴染んでいましたよ」とご連絡をいただきました。
帰宅後に本人からは「行ってみたら普通だった!」と報告もあり、心配していた親御さんを拍子抜けさせるくらい元気な様子だったそうです。
※登校刺激は非常に繊細な対応です。安易に行えば状況を悪化させることも多いため、極力専門家によるアドバイスのもと行うようにしましょう。
復学後の様子
「こんな風に言ってはいけないのかもしれませんが、息子が学校に行っていない時期はまるで一寸先も見えない闇の中にいるようでした」
お子さんが復学を迎えた日の夜、親御さんはまだ現実感の無い口調で当時を振り返っていました。
子どもにとって学校に行けない時期はもちろん辛いものです。
しかし、親御さんだって我が子が学校に行けないのは辛くて当然です。
今回のケースではその後宿泊行事に苦手意識を発揮してしまい班分けの日に一度休んでしまいましたが、家庭での対応をしっかりと組んで行った結果行事にも無事に参加してくれました。
年度末、先生から1年間の思い出を聞かれた際は「みんなと泊まって遊んだこと!」と答えたようで「なんであんなに嫌だったのかわかんない」と当時を振り返ったそうです。
苦手や不安は誰にだってあることですし、その感情は誰が否定することもできません。
しかし、そういった壁に出会った時に全く乗り越えないままでは人間的成長が滞ることがあります。
どうしても辛いときは逃げなければいけませんし、学校は命をかけてまで行くところではありません。
しかし、逃げた先でもっと辛い経験をしてしまうお子さんが増えているのもまた事実です。
「学校は無理しなくていいですよ」という時代ですが、そんな時代でも『元の学校に戻る』という選択肢が復学を目指す親子の前から無くならないことを願っています。
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